GPT-5の正式リリースと概要
OpenAIは2025年8月7日、待望のGPT-5を正式に公開しました。
ChatGPT（無料・有料プラン双方）およびAPIを通じて利用可能で、リリース直後から世界中で注目を集めています。
今回のアップデートは「劇的な進化」ではなく、堅実な性能強化と安全性向上を重視したモデルと評価されています。
GPT-5の新機能と進化ポイント
1. コーディング能力の飛躍
- SWE-bench Verifiedで74.9%の高スコアを記録。
- 複雑なバグ修正や大規模開発タスクに対応できるレベルに到達。
- 開発者からは「これまで以上に信頼できる相棒」との声も多く寄せられています。
2. マルチモーダル対応の強化
GPT-5はテキストだけでなく、画像・音声・動画の解析と生成に対応。
API上では、用途に応じて次のモデルが用意されています。
- fastモデル：高速応答用
- thinkingモデル：深い推論に特化
- nanoモデル：軽量・省リソース向け
- ルーター：最適モデルを自動選択
3. 安全性と精度の向上
- ハルシネーション（誤情報生成）の大幅低減
- Safe Completions機能でリスクのある出力を回避
- 健康・教育分野など高リスク領域での信頼性が高まりました。
4. ユーザー体験の改善
- ChatGPT上で「Cynic」「Robot」などのパーソナリティプリセットを選択可能。
- レガシーモデル（旧モデル）の再導入により、過去の使用感を求めるユーザーも対応可能。
- 応答トーンが「冷たい」との指摘を受け、”フレンドリーさ”を再調整するアップデートも実施されました。
レガシーモデル復活とその経緯
レガシーモデルとは？
GPT-5の公開に伴い、従来のGPT-4o や GPT-4.5などが一度停止されました。しかし、ユーザーからは「以前のモデルの方が回答が柔らかく自然だった」「安定して使いたい」という声が強く寄せられました。
復活の背景
- GPT-5の初期リリースでは、応答が事務的で冷たい印象を与えるとのフィードバックが多数報告。
- 特に教育や接客業務で「人間味のある返答が必要」との要望が高まりました。
- このためOpenAIは、ChatGPT Plus/Proユーザー向けにレガシーモデルを限定的に再導入。
現在の利用状況
- 無料ユーザー：GPT-5（fastモデル中心）
- Plus/Proユーザー：GPT-5に加え、一部の旧モデル（GPT-4o等）が選択可能
- API利用者：用途に応じて最新モデル／旧モデルを切り替え可能
この措置は「GPT-5の改良版を待つ間の橋渡し」としての性格が強く、ユーザー体験を損なわないための戦略的判断といえます。
コネクタ機能の追加と意義
コネクタとは？
GPT-5世代からは「コネクタ（Connectors）」が導入されました。
これはChatGPTを外部サービスやデータソースと直接連携させる仕組みで、以下のような利用が可能です。
- Google カレンダーとの連携：予定の検索や確認
- Gmailとの連携：メールの検索・内容確認
- Google Drive / Dropbox / Slackとの連携：ファイルや議事録の検索・要約
仕組みとMCPとの関係
- コネクタはMCP（Model Context Protocol）を基盤として動作。
- MCPは「MCPホスト（ChatGPT）」「MCPサーバー（外部サービスへの接続）」「MCPクライアント（ユーザー環境）」という構造をとり、安全に外部データをAIに接続する標準プロトコルです。
- これにより、ユーザーはChatGPTを中心に業務環境を統合できるようになりました。
実際の活用例
- 営業担当者がSlackでの顧客会話を検索 → GPT-5が要点を要約
- 経理担当者がGoogle Drive内の請求書を検索 → 金額や期日を自動抽出
- 個人ユーザーがGmailを横断検索 → 支払い通知メールや重要連絡を整理
このように、GPT-5は「単なる会話AI」から「業務のハブ」へと進化しつつあります。
GPT-5の料金体系
ChatGPTでの利用
- 無料プラン
- 利用できるのはGPT-5のfastモデル中心。
- 応答制限があり、大規模なタスクには向かない。
- ChatGPT Plus（有料プラン）
- 月額 20ドル前後（地域によって変動）。
- GPT-5のfull機能（fast＋thinkingモデル）にアクセス可能。
- レガシーモデル（GPT-4oなど） も選択可能。
- ChatGPT Pro（上位プラン）
- 月額 50ドル程度 とされる。
- さらに大規模な利用や優先処理が可能。
APIでの利用
- GPT-5はトークン単位で従量課金制。
- 参考としてOpenAIの発表では、従来のGPT-4oに比べて 推論あたりのコストが最適化 されている。
- 例：入力と出力で異なる単価（数ドル／100万トークン）という体系。
- 企業向けには利用規模に応じたカスタム料金プランも提供されている。
評価と反響
GPT-5は「確実な進化だが劇的ではない」という評価が多く、特にプロフェッショナル層からは実務利用の信頼性を高めた点が好評です。
一方で、リリース直後には「応答が事務的すぎる」との声が相次ぎ、OpenAIは即座にトーン調整とレガシーモデル復活という形で柔軟に対応しました。
ビジネス・業界への影響
- GPT-5公開を受け、OpenAIは企業評価額5,000億ドル規模の資金調達や株式売却を進めていると報道されています。
- 教育、医療、企業システムへの導入が加速しており、業界全体のAI活用が一段と進展。
- ただし、安全性に関する懸念や初期の脆弱性報道もあり、引き続き注意が必要です。
今後の展望
- Broadcomと共同開発する3nmプロセスAIチップを2026年に量産予定。自社インフラの強化でモデル運用コストを最適化。
- ジョニー・アイブ氏のハードウェア企業「io」を6.5億ドルで買収し、今後はAIを搭載した新しいハードデバイスの登場も予想されています。
- コネクタ機能は今後さらに拡充され、より多くの外部サービス（会計ソフトやCRMなど）と統合される見込みです。
まとめ
GPT-5は、堅実な性能強化と安全性向上を実現した最新モデルです。
- 開発者にとってはコーディング支援の大幅な強化
- 企業にとっては安全かつ効率的な業務活用
- ユーザーにとってはパーソナリティ調整やレガシーモデルの選択
- そしてコネクタによる外部サービス連携が追加されたことで、ChatGPTは単なる対話AIを超え、日常業務を統合するプラットフォームへと進化しました。
参考リンク：
