AIの進化が止まらない中、「AIを業務に取り入れたいけれど、何から手をつければ良いかわからない…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そんなAI初心者の方にこそ、ぜひ知っていただきたいのがGoogleの「NotebookLM」です。
この記事では、NotebookLMがどのようなツールで、業務をどう変える可能性があるのかを、基礎から応用まで解説します。
Google NotebookLM とは

Google NotebookLMは、一言で言えば「与えた情報だけに特化した、パーソナルAIアシスタント」です。
一般的なチャットAIがインターネット上の膨大な情報を元に回答を生成するのに対し、NotebookLMはアップロードした資料(PDF、テキスト、Webサイト、Googleドキュメントなど)の内容だけを学習し、その範囲内で質問への回答、要約、ブレインストーミングなどを行います。
この「情報源を限定できる」という点が最大の鍵です。
AIが不確かな情報を勝手に引用して、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を生成するリスクを劇的に低減できます。
つまり、社内秘の資料や専門的な研究論文、会議の議事録など、特定の情報に基づいた正確な対話や分析が可能になるのです。
NotebookLM リリース情報
初期リリース (v1.0 – Project Tailwind)
- 発表: 2023年5月10日 (Google I/O 2023)
- 概要: ユーザーがGoogleドライブから選んだドキュメントを元に、パーソナライズされたAIモデルを構築する実験的プロジェクトとしてスタート。
- 公式情報: Google I/O 2023での発表概要
正式名称変更と機能拡充
- 発表: 2023年後半
- 概要: 名称を「NotebookLM」に正式変更。より多くのユーザーが利用できるよう改善が進められました。
Gemini 1.5 Pro 搭載版リリース
- 発表: 2024年6月6日
- 概要: Googleの強力なAIモデル「Gemini 1.5 Pro」を搭載し、日本を含む200以上の国と地域で利用可能に。マルチモーダル(テキスト、画像、音声など)対応が強化され、扱える情報量(コンテキストウィンドウ)が飛躍的に増大。
- 公式情報: Gemini 1.5 Pro搭載に関するGoogle公式ブログ記事
Audio Overviews 機能追加
- 発表: 2024年9月
- 概要: ドキュメントを基に自動でポッドキャスト風の音声サマリーを生成する革新的な機能を導入。2人のAIホストが自然な会話形式でコンテンツを解説。
Audio Overview のスタイル別詳細(2025年9月現在)
NotebookLM の Audio Overview では、利用目的に応じて以下の形式を選択できます:
- Deep Dive(詳細な分析)
背景や関連情報を含めて深掘り解説。学術論文や専門レポート理解に最適。 - Brief(簡潔な要約、1–2分)
短時間で全体像をつかめる要約。会議前や移動中のインプットに便利。 - Critique(建設的フィードバック)
強みと弱みを指摘し改善点を提示。企画書や研究草稿のレビューに有効。 - Debate(議論形式)
2人のAIホストが異なる視点からディベート。多角的な理解を促進。
2025年8月のアップデートで、Audio Overview は 80以上の言語に対応し、利用シーンに合わせたスタイル選択が可能になりました。
NotebookLM Business版リリース
- 発表: 2024年11月
- 概要: 企業向けのビジネス版を提供開始。高度なセキュリティ機能と管理機能を搭載。
2025年の大型アップデート
NotebookLM Plus の個人向け展開
- 発表: 2025年2月10日
- 概要: 企業向けからスタートしたPlusプランを個人ユーザーにも提供開始。Google One AI Premium サブスクリプションを通じてアクセス可能に。
モバイルアプリの正式リリース
- 発表: 2025年5月19日
- 概要: iOSとAndroidアプリが正式リリース。これまでブラウザのみだったNotebookLMがモバイル端末でネイティブ利用可能に。
Video Overviews 機能追加
- 発表: 2025年8月
- 概要: ノートやPDF、画像などをもとに、スライド付きの動画サマリーを自動生成する新機能を導入。
- 視覚+音声による学習: スライドとナレーションが組み合わさり、理解が深まりやすい。
- 複数スタイル対応: 短時間の要約版から、詳細分析版まで、学習目的や時間に応じて切り替え可能。
- 80言語以上に対応: 日本語を含む多言語対応が追加され、教育やビジネスでのグローバル利用が容易に。
- UI強化: Studioタブに「Reports」「Mind Maps」「Video Overviews」などの新オプションが追加され、学習スタイルを切り替えやすくなった。
- 教育分野での活用: 授業教材や研究発表をAIが自動的に動画化し、学生の復習・自主学習に最適。
この機能により、NotebookLMは「読む」「聞く」に加え「見る」学習スタイルをもサポートし、マルチモーダル学習ツールとしての地位を確立しました。
学生への対象拡大
- 発表: 2025年8月
- 概要: 学生がNotebookLMの全機能にアクセス可能に。Audio OverviewsやインタラクティブなMind Mapsも教育目的で利用可能に。
最新アップデート
- 最新APK版: 2025年9月3日
- 概要: Android版の継続的アップデートが実施され、パフォーマンスと安定性が向上。
進化のハイライト
NotebookLMは約2年間で実験的プロジェクトから本格的なAI学習・研究ツールへと大きく進化しました:
- 2023年: 実験的なProject Tailwindとして開始
- 2024年: Gemini 1.5 Pro 搭載、Audio Overviews追加
- 2025年: Gemini 2.5 Flash 搭載、モバイル対応、Video Overviews、学生向け展開など大幅拡張
現在のAIモデル構成(2025年9月現在)
- 無料版: Gemini 2.5 Flash 搭載
- 有料版(Google AI Pro 学生プランなど): Gemini 2.5 Pro 搭載
NotebookLMは現在、研究者、学生、ビジネスユーザーまで幅広い層に利用される、包括的なAI支援学習プラットフォームとして確立されています。
Google NotebookLM の特徴
LLM(大規模言語モデル)との違い
ChatGPT(GPTシリーズ)やClaude、そしてベースとなっているGeminiなど、一般的なLLMとの最も大きな違いは「グラウンディング(Grounding)」という考え方にあります。
- 根拠・理由:
一般的なLLMは、インターネット全体という広範すぎる知識を元に回答を生成するため、時に不正確な情報や文脈に合わない回答をしてしまうことがあります。
これに対し、NotebookLMは、提供した資料という「地面(Ground)」にしっかりと足をつけた状態で思考します。
AIの知識が、与えた範囲内に限定(グラウンディング)されているのです。 - 結論:
その結果、NotebookLMは情報の正確性と信頼性が極めて高いという特徴を持ちます。
社内の機密情報や専門的なデータ分析など、正確性が求められる業務で安心して利用できます。
使われ方の違い
一般的なLLM (ChatGPT, Geminiなど) | Google NotebookLM | |
得意なこと | ゼロからのアイデア出し、壁打ち、一般的な知識に関する質問、文章の生成・翻訳 | 特定の資料群の深い理解、分析、要約、質疑応答、情報整理 |
使われ方 | 「創造のパートナー」 | 「分析・リサーチの専門家」 |
例 | 新商品のキャッチコピーを10個考えて | この3つの競合製品の資料から、機能差を比較する表を作成して |
NotebookLM の使用方法(最新版)
基本的な使い方
- ノートブックの作成
NotebookLMにアクセスし、「新しいノートブック」を作成します。 - データソースの追加
左側の「ソース」パネルから、分析したい資料を追加します。- PCからのアップロード(PDF、TXT、音声ファイルなど)
- Googleドライブからの読み込み(ドキュメント、スライドなど)
- WebサイトのURL貼り付け
- テキストのコピー&ペースト
- AIとの対話
資料が読み込まれると、中央のチャットエリアでAIに質問や指示ができます。
例:- 「この資料の要点を3つにまとめて」
- 「〇〇に関する記述をすべて抜き出して」
機能別の詳細な説明
データソース対応
- 対応形式: PDF、TXT、Googleドキュメント/スライド、WebサイトURL
- マルチモーダル入力: YouTube動画のURLや**音声ファイル(MP3, WAVなど)**もソースとして扱えます。
- Gemini 2.5 Pro/Flash 搭載により、長大な資料や複数ソースを一括で処理可能。
AI分析・要約機能
- ノートブックガイド: 資料群全体の概要、主要トピック、タイムライン、FAQをワンクリックで自動生成。
- Briefing Doc(要約文書作成): 複数の資料を横断した構造化サマリーを作成し、レポートやプレゼンの下地として活用可能。
チャット機能・質問応答
- チャット画面で自由に質問可能。
- 回答には引用元へのリンクが必ず表示され、事実確認が容易。
- 多言語対応(80+言語)により、日本語・英語を含む様々な言語での質問が可能。
画像・図表認識
- Geminiのマルチモーダル能力により、画像やグラフの内容を読み取り回答に反映可能。
- 複雑な図表の完全解釈はまだ発展途上ですが、基本的な読み取りは可能。
Audio Overview(音声生成)
- 右上の「作成」メニューから利用可能。
- AIが資料を基に、ポッドキャスト風音声を自動生成。ダウンロードも可能。
スタイル別出力(選択可能)
- Deep Dive: 詳細分析
- Brief: 1–2分の簡潔な要約
- Critique: 建設的フィードバック
- Debate: 2人のAIホストによる議論形式
2025年8月以降、Audio Overview は 80言語以上に対応し、利用シーンに合わせてスタイルを切り替え可能になりました。
Video Overviews(動画解説機能)
- 発表: 2025年8月
- 資料の内容をナレーション付きスライド動画に自動変換。
- 利用シーン: プレゼンのたたき台、学習教材、研究発表資料の自動生成。
- 特徴:
- 短縮版(Brief)から詳細版(Deep Dive)まで切り替え可能
- 80+言語対応
- Studioタブに「Reports」「Mind Maps」と並んで「Video Overviews」が追加
Discover Sources 機能
- ソースパネルの「ソースを検出」から利用。
- トピックを入力すると、Web上から関連情報を検索し、直接ノートブックに追加可能。
- リサーチ初動の短縮に役立つ。
業務シーン別の具体的な使用例
1. 社内ナレッジ管理・情報共有
- 課題: マニュアルや議事録が散在し必要情報を探しにくい。
- 活用例: 関連ドキュメントをNotebookLMに集約し、AIを社内FAQボットとして活用。
例:「〇〇の申請手続きは?」「昨年△△プロジェクトの決定事項は?」
2. 教育・研修支援
- 課題: 研修資料が多く、学習効率が低い。
- 活用例: 研修資料を読み込ませ、受講者が自分のペースで質問可能。
- 専門用語の解説集
- 理解度チェック用クイズの自動生成
- Audio/Video Overviewsによる教材化
3. 資料作成・コンテンツ制作
- 課題: 大量の資料を元にレポート・記事・プレゼンを作るのに時間がかかる。
- 活用例: AIに構成案作成やデータ分析を依頼し、壁打ち的に利用。
- 利点: 引用元が明確で正確な情報に基づいた成果物を効率的に作成可能。
最新の利用環境
- 無料版: Gemini 2.5 Flash 搭載
- 有料版(NotebookLM Plus, Google AI Pro 学生プラン): Gemini 2.5 Pro 搭載
- 対応OS: Android 10以上、iOS 17以上
- 展開状況: 日本を含む200以上の国と地域
料金体系
NotebookLMの料金体系は、主に3つの段階に分かれています。
プラン | 対象ユーザー | 料金 | 主な特徴 |
無料プラン | 個人、小規模な利用 | 無料 | ノートブック数100個、ソース数各50個までなど、個人利用には十分な制限。 |
Proプラン | パワーユーザー、専門職 | Google One AI Premium に内包 (月額2,900円程度) | 無料プランの上限が大幅に緩和(ノートブック500個、ソース300個など)。より多くの資料を扱うユーザー向け。 |
Enterpriseプラン | 企業、教育機関 | 要問い合わせ | Google Workspaceと連携し、高度なセキュリティ、管理機能、データ保護を提供。組織での大規模利用向け。 |
AI初心者の方は、まずは無料プランから始めて、その便利さを体感することをおすすめします。
使用上の注意点
- コンテキストウィンドウの限界:
一度に扱える情報量には上限があります。
非常に長大な文書(数十万語を超えるもの)では、文書の全体を完全には把握できず、回答の精度が落ちる可能性があります。 - 情報源の質がすべて:
NotebookLMの回答は、与えた情報源の質に完全に依存します。
間違った情報や古い情報をソースとして与えれば、AIもそれに沿った回答しかできません。 - データプライバシー:
Googleは、NotebookLMに入力されたデータをモデルのトレーニングに使用しないと明言しています。Enterpriseプランではさらに高度なデータ保護が提供されますが、利用規約は常に確認するようにしましょう。
まとめ
Google NotebookLMは、単なるチャットAIではなく、信頼できる情報源に基づいて思考する、パーソナルなリサーチアシスタントです。
情報の洪水に溺れることなく、必要な知識を的確に引き出し、分析し、活用することを可能にします。
特に、大量の資料を扱う業務、専門知識が求められる業務、そして情報の正確性が不可欠な業務において、その真価を発揮します。
まずは無料プランから、身近な資料を使ってその力を試してみてはいかがでしょうか。
AIを賢く活用し、業務効率を飛躍的に向上させる第一歩が、ここから始まるかもしれません。
おすすめ動画
この動画では、NotebookLMの基本的な使い方から便利な機能までが分かりやすく解説されており、初めて触れる方にとって最適なガイドとなります。